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奈良地方裁判所 昭和57年(わ)176号 判決

裁判所書記官

佐貫俊弘

本店所在地

奈良市南京終町四丁目二四七番地

草竹コンクリート株式会社

右代表取締役

草竹杉晃

本籍

奈良市西木辻町一三二番地

住居

奈良市南京終町四丁目二四七番地

会社役員

草竹杉晃

昭和九年一一月一二日生

右被告人草竹コンクリート工業株式会社、被告人草竹杉晃に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官平田建喜出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告人草竹コンクリート工業株式会社を罰金一億四千万円に、

被告人草竹杉晃を懲役三年に、

それぞれ処する。

被告人草竹杉晃に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人草竹コンクリート工業株式会社は、奈良市南京終町四丁目二四七番地に本店をおき、各種コンクリート製品の製造販売等を営業目的とする株式会社であり、被告人草竹杉晃は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人草竹は、同会社の業務に関し、その所得を秘匿して法人税を免れようと企て、

第一  昭和五三年八月一日から同五四年七月三一日までの事業年度における所得金額は六億九、二三二万九、八五八円、これに対する法人税額は二億七、四三四万九〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上、売上やたな卸の一部を除外するほか架空の仕入を計上するなどの不正手段により、その所得金額のうち五億七、四二四万五、五一一円を秘匿した上、昭和五四年一〇月一日奈良市登大路町八一番地所在の所轄奈良税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億一、八〇八万四、三四七円、これに対する法人税額が四、四六五万六、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二億七、四三四万九〇〇円と右申告税額との差額二億二、九六八万四、六〇〇円をほ脱し、

第二  昭和五四年八月一日から同五五年七月三一日までの事業年度における所得金額は七億六、六二一万九、九八六円、これに対する法人税額は三億三七五万四、八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち五億四、三四四万四、三〇一円を秘匿した上、昭和五五年九月三〇日前記奈良税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億二、二七七万五、六八五円、これに対する法人税額が八、六三八万七、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額三億三七五万四、八〇〇円と右申告税額との差額二億一、七三六万七、八〇〇円をほ脱し、

第三  昭和五五年八月一日から同五六年七月三一日までの事業年度における所得金額は一〇億八、九七五万六、〇七九円、これに対する法人税額は四億五、四一四万九、九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段によりその所得金額のうち八億七、九一四万五、〇五四円を秘匿した上、昭和五六年九月三〇日前記奈良税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億一、〇六一万一、〇二五円、これに対する法人税額が八、四九二万四、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度の正規の法人税額四億五、四一四万九、九〇〇円と右申告税額との差額三億六、九二二万五、三〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判事全事実につき

一  被告人草竹杉晃の検察官に対する供述調書(二通)並びに収税官吏に対する質問てん末書(九通)

一  草竹晴美の検察官に対する供述調書(三通)並びに収税官吏に対する質問てん末書(検察官請求証拠目録48ないし53、55ないし58の一〇通)

一  吉田善弘の検察官に対する供述調書並びに収税官吏に対する質問てん末書(二通)

一  清水勝利の検察官に対する供述調書並びに収税官吏に対する質問てん末書

一  清水勝利の大蔵事務官に対する確認書

一  大蔵事務官作成の脱税計算書説明資料

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(同目録15、17、18、24、25、27、32、33、38ないし44の一五通)

一  奈良税務署長作成の証明書

一  被告人会社の商業登記簿謄本

判示第一、第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(検察官請求証拠目録11、34の二通)

判示第二、第三の事実につき

一  草竹晴美の収税官吏に対する質問てん末書(検察官請求証拠目録54の一通)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(同目録16、23の二通)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(検察官請求証拠目録1、2の二通)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同目録5)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(同目録10、30、37の三通)

一  新屋昇の大蔵事務官に対する確認書(同目録21)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(検察官請求証拠目録3)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同目録6)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(同目録14、31の二通)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(検察官請求証拠目録4)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同目録7)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(同目録12、13、19、20、35の五通)

一  新屋昇の大蔵事務官に対する確認書(同目録22)

一  株式会社日晃製作所作成の取引内容等の照会に対する回答書

を総合して、それぞれこれを認める。

(法令の適用)

被告人草竹杉晃の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に、被告人会社の判示各所為はいずれも同法一六四条一項、一五九条一項に各該当するところ(但し判示第一、第二の各所為は、いずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項、一六四条一項に、裁判時においては右改正後の法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するが、犯罪後の法律により刑の変更があったときに当るから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとする)、被告人草竹杉晃については所定刑中懲役刑を選択し、以上はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人草竹杉晃については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人会社に対しては法人税法一五九条二項、刑法四八条二項により免れた法人税額に相当する金額以下である各罪所定の罰金の合算額の範囲内において、本件法人税法違反によるほ脱額は、所持金額の大部分を秘匿した虚偽の確定申告によりなされた結果、被告人会社の昭和五四年度、同五五年度、同五六年度の三ケ年の事業年度にわたり実に八億一、六二七万七、七〇〇円の多額に及ぶものであり、しかもその違反行為は相当長期間にわたり、かつ計画的に行われたものであって、その顕著な反社会性は厳しい社会的非難を免れないものであり、その刑責は重いものであるが、他面、本件所為に及んだ経緯、動機においては、被告人草竹杉晃の自己の健康に対する不安、それに加えて被告人会社の業態が景気の変動による影響を受け易い業種であることによる危惧が手伝っていたという事情が看取されること、またその脱税手段の態様が比較的単純なもので、必ずしも強度に悪質という程のものではないこと、なお本件については修正申告をし、既に本税を追徴金とともに納付済であること、被告人会社の業務に関し代表者である被告人草竹杉晃の職務を代行できる者がなく、同被告人の存在が必要不可欠なものであって、実刑に処せられると同会社の経営に著しい困難が生じること、同被告人は深く自己の非を反省しており、これまで何等の前科、前歴がないものであること等の諸事情を勘案して、同被告人を懲役三年に処するとともに同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日より四年間右刑の執行を猶予し、被告人会社を罰金一億四千万円に処することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 梨岡輝彦 裁判官 加島義正 裁判官 北秀昭)

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